なにか弾いてみることになりタカトリが演奏をはじめた。
曲はベートーベンの「ピアノソナタ悲愴第2楽章」だった。しばらくして横に立っていた先生の表情がかすかに変わっていった。聞いているのは私と先生の二人だけだ。息をのむように静かに時間が流れていく。はじめての出会いとはこのようなものだと思った。
ベートーベンの楽曲だが自己主張は強くない。やわらかくそして優しい音色だろうか。演奏者、その人の持つセンスがそのままに出ているのだと思った。つぎにバッハの「主よ人の望みの」、を聞いた。通奏低音の美しいベースラインが教室内に響きわたって行く。俺もあんな風に弾けるようになりたいと思った。
それから練習方法などの話しに移り、私はをそれを横で聞いていた。
興味深かったのは暗譜する事の意味、また楽譜の存在をどのように理解するかの話であった。つまりは記号や文字、テキストなどをどのようにとらえていくかの問題であったと思う。
あたりまえのはなしだが文字で記録されなければ後世にはなにも遺らなかった。ことばや文字にしろ形にしろ、それらは常に変容してしまう。そんな危険性を常に内在させている。動画もそうなのだが。しかし留める事をやめてしまえば表現は伝わっていかぬものだ。
今なされた演奏も、楽譜という過去の記述が、我々現代に伝えた美しい結果なのである。私にとってはそんな珠玉を目撃した一夜であった。そして稽古は続けなければならないと思った。感謝したい。
曲はベートーベンの「ピアノソナタ悲愴第2楽章」だった。しばらくして横に立っていた先生の表情がかすかに変わっていった。聞いているのは私と先生の二人だけだ。息をのむように静かに時間が流れていく。はじめての出会いとはこのようなものだと思った。
ベートーベンの楽曲だが自己主張は強くない。やわらかくそして優しい音色だろうか。演奏者、その人の持つセンスがそのままに出ているのだと思った。つぎにバッハの「主よ人の望みの」、を聞いた。通奏低音の美しいベースラインが教室内に響きわたって行く。俺もあんな風に弾けるようになりたいと思った。
それから練習方法などの話しに移り、私はをそれを横で聞いていた。
興味深かったのは暗譜する事の意味、また楽譜の存在をどのように理解するかの話であった。つまりは記号や文字、テキストなどをどのようにとらえていくかの問題であったと思う。
あたりまえのはなしだが文字で記録されなければ後世にはなにも遺らなかった。ことばや文字にしろ形にしろ、それらは常に変容してしまう。そんな危険性を常に内在させている。動画もそうなのだが。しかし留める事をやめてしまえば表現は伝わっていかぬものだ。
今なされた演奏も、楽譜という過去の記述が、我々現代に伝えた美しい結果なのである。私にとってはそんな珠玉を目撃した一夜であった。そして稽古は続けなければならないと思った。感謝したい。